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固定残業、みなし残業のワナ

ほとんどの会社で残業があるが、残業代の支払い方法にはいくつかのパターンがある。その中でも固定残業、みなし残業の制度は厄介である。この制度は多くの中小企業やベンチャー企業で採用されている。制度本来の目的は残業時間の算出や残業代の計算の手間を省くことだが、現実は定額働かせ放題の温床となるなど、問題の起きやすい制度である。以下に固定残業、みなし残業の問題点を指摘する。

 

1.定額働かせ放題ができてしまう

固定残業時間を超える残業をした場合、当然ながら超過分の残業代が支給される。しかし、悪意のある企業では超過分の支払いがなく「うちは固定残業だから」という意味不明なマジックワードで無知な労働者を煙に巻いてしまう。新卒で中小企業やベンチャー企業に入った場合だと、そもそも残業代がもらえる条件や残業代の計算方法も知らないまま社会人歴10年を超えてしまうような人も存在する。新卒で大企業やきちんとした会社に入った場合、残業代の支給条件や計算方法は新入社員研修できっちり学習する。就業規則労働基準法なども丁寧に添えて、社員の労働者としての権利を会社が学ばせてくれる。これは当たり前といえば当たり前だが、驚く人は驚くだろう。しかし中小企業やベンチャー企業で行われる研修は業界研究、ビジネスマナー、ビジネススキルに特化されており、労働者の権利について学ぶ機会はおろか、気軽に質問できる空気感さえない。「残業代」などと口にすれば、組織への反抗者として白い目で見られかねない独特の空気感がある。そして、達成不能なノルマや抱えきれない業務量をこなすために、労働者は定額働かせ放題という地獄に気付かぬうちにハマって抜け出せなくなってしまう。

 

2.長時間労働の温床になる

固定残業、みなし残業のメリットは経営者と労働者のそれぞれにある。経営者は面倒な残業代の計算をいちいちしなくて済むし、人件費が毎月定額で経理面の見通しが立てやすい。労働者も毎月決まった月給であるため、生計の見通しが立てやすく、固定時間を超えても超過分が支給され、逆に固定時間に満たなくてもあらかじめ決められた固定残業代を受け取れるためデメリットではない。

しかし、実際はというと、例えば固定残業30時間と決められている場合、最低でも30時間残業しないとサボりや手抜きとみなされて上司から指導や注意を受けることになる。そしてノルマや業務量は固定残業時間を含めた設定になるため、定時で業務が終わることなど通常あり得ない忙しさだ。これはもはや残業ではなく、所定労働時間が1日10時間がデフォルトになる。時間管理がないため、ノルマや業務に追われて、まじめで責任感の強い人ほど深夜や休日も自発的に働き、最後には心身を病んでしまう。労働者使い捨てと呼ばれる所以である。

 

3.自分の真の給料がわからない。

給料とは大きく「基本給」「諸手当」「残業代」に分けられる。この中で一番大事なのは「基本給」だ。固定残業制の会社は基本給を低く設定し、固定残業30時間分をあらかじめ上乗せすることで、給与額を高く見せている。しかし真の給料は基本給部分である。2010年代の相場で、大卒の場合、基本給16万円で働きたい人はいないだろうが、中小・ベンチャー企業では基本給16万円に、固定残業代6万円を上乗せして月給23万円とうたう企業が多い。これだと普通に大卒の学生を集められてしまう。一方で大手企業は基本給21万円だが、当然残業代は残業した分だけきっちり支払う。基本給差はすでに5万円だ。30歳になるころには、年収差で最低でも300万円はついてしまう。中小・ベンチャー企業に就職するリスクを上げ始めるときりがない。

 

以上が固定残業、みなし残業のワナだ。まだまだ書ききれない部分もあるので、また別の記事で書きたい。